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近年注目を集める品種「フレイザ」ですが、フレッシュで気軽に飲めるスタイルのフレイザとは対極に位置しているのがこの「キエ」で、比較対象となるのはもはや「バローロ」などの長熟系のワインになりそうです。
コアにはどこか野性味を有する赤系の果実味が感じられ、適度に旨味が乗った凝縮したプラム、充足感のある豊満なボディなど、仄かなキュートさと同時に高い次元での濃密さが伝わってきます。10年を超える熟成を経ていることもあってか、表層は非常に滑らかで、全体を通して終始落ち着いた表情を見せてくれますが、所謂オールド・ヴィンテージ的な枯れた要素は皆無で、むしろ綺麗でフレッシュな表情の方が印象的でもあるので、改めて言われなければ長期熟成を経ていることに気がつかないかもしれません。
タンニンは豊富である程度の収斂要素も兼ね備えていますが、その資質が微細かつ滑らなこともあって、どこかが突出するようなこともなく全く気にならないのも特徴の一つです。むしろ、ボディ全体の流麗感とバランスの良さ、そして心地よい口当たりと相まって、見事な世界観構築の一助となっている印象でもあります。一般的なフレイザに対する根本から認識を覆すほどのエネルギーがあり、まだまだ更なる長期熟成も可能ですが、同時に現時点で十分すぎるほどの美味しさを披露してくれるので、今回の印象だと、同じヴィンテージのバローロ(アルベ)よりも、こちらのキエに一票を投じたい気分になります。
(2020/01)