- Very Good Quality -
ワイパラが誇る名門ワイナリー「マウントフォード」で、長年アシスタント・ワインメーカーとして携わっていた「小山竜宇」が立ち上げた自身のワイナリーが「コヤマ・ワイパラ・ワインズ(現在はコヤマ・ワインズに改名)」。設立は2009年と歴史は浅いのですが、信頼できるオーナーと畑を契約し、栽培や管理をきっちりとコントロールすることで、素晴らしい畑の持つポテンシャルを存分に引き出しています。
コヤマ・ワインズを代表する特別キュヴェがこの「S」。葡萄そのものもより良質なものが厳選されていますが、醸造面でも差異があり、通常のウィリアムス・ヴィンヤードが除梗で造られるのに対して、このSは上面開放フレンチオークを使用し「全房発酵100%」で造られています(2014年ヴィンテージは全房発酵比率50%)。
想像していたイメージとはやや異なり、抜栓直後から素直に美味しいと感じる魅力ある表情が広がります。同じ全房100%で造られるランソリットの直後に試飲したこともあり、その正反対な表情には素直に驚かされますが、ニューワールドにしてはやや薄めの酒質が功を奏しているのか、ピノらしい流麗な赤系果実の魅力と旨味が心地よく体に染み入ってきます。表層は滑らかかつクリーンですが、体躯ボリュームはしっかり感じられ、緻密な体躯内部には十分なコアが感じられます。また、抜栓翌日に持ち越すと本来のポテンシャル系要素が垣間見られるようになり、アフターにかけてのヒリヒリとした質感や全房らしいスパイシーな要素など、多様な複雑さもしっかりと広がります。
生産数が限られた特別キュヴェということもあり、価格も高く市場で見かけることがほとんどないのが残念ではありますが、今飲んで楽しめる要素と将来的なポテンシャル要素、その両方をバランスよく内包した良質な世界観なので、もし見かけることがあれば是非試してもらいたいところです。
(2018/01)