- Good Quality -
佐藤嘉晃、恭子夫妻による小さなプロジェクトとして、2009年に始まったのが「サトウ・ワインズ」。もともとは銀行員だったという異色の経歴の持ち主ですが、転勤先のロンドンでワインに目覚め、ワインを造りたいという思いにかられ、最終的にニュージーランドにたどり着きます。セントラル・オタゴを代表する偉大な生産者「フェルトン・ロード」でキャリアを重ねたこともあり(恭子さんは現在もフェルトン・ロードの栽培に関与)、サトウ・ワインズも同じセントラル・オタゴを拠点としています。
サトウ・ワインズを代表するピノ・ノワールがこの「ランソリット」。フランス語で「変わった」「奇妙な」といった意味を持つランソリットは、スタンダード・キュヴェと同じピサ・テラス・ヴィンヤードの畑から造られますが、スタンダード・キュヴェの全房発酵比率が20%なのに対し、ランソリットは全房発酵100%で造られるという特徴があります(2013年は他に完全除梗のパルティキュリエールも造られている)。熟成は新樽比率20%のフレンチ・オーク・バレルで20ヶ月間。生産本数は僅か1,454本(ボトリングは2015年1月27日)。
非常に希少なランソリットですが、特別な一本といったような格上感のある世界観というよりは、あくまでも他のキュヴェと同質の世界観を共有している傾向にあります(まさにサトウ・ワインズらしいスタイル)。青さは皆無で全房らしいスパイシーで複雑な風味をコアに内包してはいるものの、印象としてはむしろ表層の滑らかさや纏まり感、そして何より豊かなボリュームと純粋な果実味の方がより明確です。体躯内部は微細かつ緻密で、充実した厚みがあり、他のキュヴェと比較すると、よりピノ・ノワールらしい流麗な表情がベースとなっています。また、ポテンシャル要素もやや分があり、翌日に持ち越すと充実した果実味の魅力がより前面に出て、内包する魅力が時間とともに昇華していく傾向にあります。他のキュヴェと同じように、やや揮発系のニュアンスも感じられますが、全体的なパッケージングが良好なこともあってか、特別ネガティブな印象を受けるわけではないので、そこまで気になることはないと思います。
(2018/01)