- Good Quality -
クリス・リングランドの手腕が光る、非常に高い評価を得るモダン・スパニッシュの筆頭格がこの「ボデガス・アルト・モンカヨ」。下のクラスとなるこのベラトンも、変わらず非常に高いクオリティを誇りますが、それでも以前試飲した2009年からは、若干指向性に変化がある印象でもあります(エネルギー総量が増えた代わりにやや若々しくなった印象)。
アタックから印象的なのが、バニラやクリームを感じるやや彩度が高めの樽要素で、充実した果実力を誇るボディとは適度にバランスしているものの、それでも馴染むことなくやや浮き気味なのが多少気になるところではあります。とはいえ、時間とともに徐々に馴染んでいく傾向にあるので、抜栓翌日の表情変化を鑑みると、今から数年程度待てばかなり良好な変化が見られる印象でもあります。
圧倒的な果実の充実度は相変わらずの水準にあり、仄かな橙系の酸に緻密かつ一定密度の体躯内部、そして驚異的な高アルコール(15.5%)を誇ることなど、ガルナッチャという品種とカンポ・デ・ボルハという土地のポテンシャルを極限まで引き出しています。しかも、実際の印象は高アルコールとは思えないほど滑らかかつ心地よく、その口当たりの良さから驚くほどにスルスルと飲めてしまいます。世界観を構成する各要素が全てにおいて高い次元で充実し、なおかつきっちりバランスしているというのが最大の特徴でもあり、相対的に以前よりも技術的指向性が色濃くなっていても、決してネガティブな印象を受けないというあたりが、やはりクリス・リングランドの手腕の凄さなのかもしれません。唯一気になるのが価格の急激な上昇傾向で、ある意味、元が安すぎたとも言えますが、現状で既に数ヴィンテージ前の上位クラスとほぼ同じ価格になってしまったことを鑑みると、今後さらに価格が上昇しないことを祈るばかりです。
(2017/11)