- Good Quality -
プルミエ・クリュの格付けとなる「リリー・ラ・モンターニュ」の村で1890年に創業したのがこのヴィルマール。ビオロジックによる栽培と木樽による発酵と熟成が最大の特徴となっています。このクール・ド・キュヴェは、ヴィルマールを象徴するトップ・キュヴェで、リリー・ラ・モンターニュの最良区画から厳選された樹齢50年以上のヴィエイユ・ヴィーニュの葡萄のみを使用しています。セパージュは、シャルドネ80%にピノ・ノワール20%。バリックで10ヶ月間熟成され、60〜96ヶ月の瓶熟を経てリリース。MLFは一切行いません。
以前、現地ドメーヌで試飲した時以来となるクール・ド・キュヴェの2007年ですが、実はこの年はシャンパーニュにおける不作の年として知られ、多くの造り手はミレジメの生産を取りやめています。しかしヴィルマールにおいては、作柄の出来、不出来に関係なく、そのミレジメを表現するスタンスで基本的には毎年造られています。オフ・ヴィンテージということもあり、2002年のような完璧な世界観とは真逆の指向性で、突出した強烈な酸が非常に印象的です。色調はやや緑がかった黄色。構成要素は比較的シンプルで体躯サイズも細めな傾向にあり、全体をキリリと引き締めるクエン酸系の風味が芯に一本立ち誇ります。しかし、鋭さはあるものの飲みにくいわけではなく、ブリオッシュ系の風味とコアの程よいまろやかさ、そして、こぢんまりとしながらも表情は緻密に重ねられていることなど、表情が単調にならないようにしっかりと組み上げられている印象を受けます。
2002年と比較してしまうと、どうしても欠点に目が行きがちですが、この際立つ酸をひとつの個性として捉え、美点として昇華させることができれば、実際には非常に高い満足感を得ることができます(品質そのものは高い)。万人受けするスタイルではないものの、酸に対する耐性が強く、多様性と寛容さを持ち合わせた人であれば、ぜひ試してもらいたいところではあります。
(2015/05、2017/02)