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イタリアワインの代名詞と言っても過言ではないほど有名な、歴史と名声に裏打ちされた偉大なワインが「ティニャネッロ」。2010年のセパージュは、サンジョヴェーゼ80%、カベルネ・ソーヴィニヨン15%、カベルネ・フラン5%。現在のキャンティ・クラッシコは国際品種のブレンドも認められていますが、その昔は白葡萄をブレンドする必要があったことなど、品質を最重要視した場合はデメリットが多々ありました。そんな中、敢えてキャンティ・クラッシコを名乗らず、自身のアイデンティティを確立した「ティニャネッロ」は、トスカーナのみならず、イタリアワイン全体における大きな枠割を果たした存在だとも言えます。
数ヶ月ほど前に最新ヴィンテージを試飲する機会がありましたが、基本的なスタイルや世界観は2010年もほぼ同等で、数年の熟成差によって全体的に柔らかく熟れ始めていることで、より飲みやすくなっている印象を受けます。一言で言うと「ザ・モダン」。キャンティ・クラッシコを名乗らないということがよく分かる内容でもあり(完全に別カテゴリーのワイン)、上質な樽由来の品位あるバニラ風味に、豊かで隅々まで行きわたる緻密なボディ、そしてサンジョヴェーゼらしい美しい酸が伸びやかに立ち登ります。良質な葡萄を得るために畑仕事にコストをかけ、更に上質なワインに仕上げるために醸造にもコストをかけた、まさにアンティノリが手塩にかけて構築する「ティニャネッロという名のアイデンティティ」が明確化されている印象でもあります。
分かりやすいモダンスタイルなので今からでも過不足なく楽しめますが、それでも真のポテンシャルが完全に発揮されるにはまだまだ多くの時間が必要で、あまりにも早く飲んでしまうと「誰が飲んでも美味しいワイン」といった当たり障りのない評価に収束してしまうかもしれません。サッシカイアなどと同様に、良くも悪くもブランド力があるワインなので、その本質を理解するためにも、ある程度の熟成期間(出来れば10〜20年程度)を経てから向き合いたいところではあります。
(2016/10)