- Good Quality -
謎の多いワインであり、遥か昔は、ラス・カーズの若木から造られるサードワインという説もありましたが(現在のサードワインはクロ・デュ・マルキ)、近年ではシャトー・デュ・グラナの葡萄を使用し、ラス・カーズのオーナーの一人アルトンのためにボトリングしている、という説が強くなっています。また、今回のロットは使用されているコルクがかなり綺麗で、15年近い年月が経っているようには思えないので、もしかしたらどこかの段階でリコルクされているのかもしれません。
その世界観は、タンニンを主体とした渋みと強い苦味を伴う、不思議な若さを兼ね備えたものとなっています。全体としては、2005年のクロ・デュ・マルキの指向性をさらに強め、そのコントラストを必要以上に高めたような傾向にあります。タンニン以外の要素は丸く、そして熟れ、熟成感のある指向性もしっかりと感じられますが、何よりタンニンが強いので、二律背反的な独特の表情が広がります。下のレンジとは思えないほどの充実さはありますが、そういった側面とは裏腹に、なぜか訴求力が低く、儚さやそっけなさ、そして余韻の伸びのなさなど、不思議なほどにポジティブな要素よりもネガティブな要素に目が移ります。ただ、価格は抑えられているので、古酒の持つ独特の世界観の一端を気軽に感じるには、ちょうど良い立ち位置と言えるかもしれません。
(2015/11)