- Recommended -
カリフォルニアのロバート・モンダヴィと、フランスのバロン・フィリップ(シャトー・ムートン・ロートシルト)によるジョイントベンチャーワインで、「作品番号第一」という名が付けられた「オーパス・ワン」です。
2011年は、冬から春の多雨に加え、通常は雨のない開花時期の6月にも雨が降るという、不純な雨と低い気温の影響が影響とした年となりました(特に12月と3月の雨量が多かった)。年間平均降雨量としても、この地域の一般的な年の倍以上となる「1209mm」を記録しているので、干ばつに悩まさることになる2012年以降とは全く異なる天候だと言えます。ただし、地中の水分を減らすための栽培面での対応や、葡萄そのものの生命力(全体の65%がオーガニックで、残りの35%がビオディナミ)によって、適切な成熟レベルの果実が得られています。醸造面では、スキン・コンタクトが17日、フレンチオークの新樽で18ヶ月間熟成され、セパージュはカベルネ・ソーヴィニヨン71%、メルロ-11%、プティ・ヴェルド9%、カベルネ・フラン8%、マルベック1%となっています。
2011年は、カリフォルニアの一般的なイメージとは対照的なスタイルとなる「涼しい年」となったので、当初の評価はやや低めとなりましたが、この1年でも本来の良さが徐々に現れ始め、時間を追うごとに評価が高くなっている傾向にあります。このあたりは、元シャトー・マルゴーのエステート・ディレクターを勤めたフィリップ・バスコール氏とイングルヌックの2011年(レビュー未掲載)を試飲した時にも痛切に感じましたが、ヴィンテージのスタイルに関係なく、全体を構成する各要素間で適切なバランスがとれていれば、最終的な訴求力は偉大な年に負けず総じて高くなるので、ある意味、早計な判断は禁物だとも言えます。また、このカリフォルニアにおける「涼しい気候」というのは、個人的には逆に非常に良好な影響を与えているようにも感じ、ニューワールドらしいエネルギーにオールドワールドらしい品位や落ち着きがうまく加味されているとも言えるので、翻って考えると、現実的に嗜める良質さを兼ね備えた素晴らしい出来とも捉えることもできます(伝統産地のワインが好きな人や、日本人の嗜好に合ったスタイルとも言えそう)。
アタックから印象的なのは、グリーンがかったドライなハーブ香が心地よく広がる点にあります。以前試飲した1995年にも相通じるカベルネらしい良質な表情なので、決してネガティブな印象はありません。そこにエレガントかつ、黄色系の要素を多分に含む酸が加わり、結果として充実した果実が黒系にシフトすることなく、赤系のスタンスで綺麗に飲み手に伝わる傾向にあります。ボリューム感や厚みはないものの、オールドワールド的な表情が色濃くなっているので、このスタイルを好意的に受け止める層は意外と多いようにも感じられます。
※今回試飲したのは現地流通ボトルとなっています
(2015/09)