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ビオディナミを語る上では欠かすことのできない巨匠、まさにビオディナミの伝道師とも呼べる「ニコラ・ジョリー」が単独所有する、ロワールにおけるグラン・クリュとも言うべき偉大なワインがこの「サヴニエール・クーレ・ド・セラン」です。
モノポールとなるこの畑の面積は7ha。南向きの急斜面で平均樹齢は40年以上(古い樹で80年)となります。現代では辛口ワインとして造られていますが、貴腐化するシュナン・ブランを使用することもあってか、もともとは甘口ワインとして造られていました。90年代あたりまでは収穫が早く行われいたようですが、現在では収穫を遅らせ貴腐化した葡萄も使用しているので(2004年は20%が貴腐葡萄)、あくまでも辛口ワインでありながら、そこには貴腐葡萄の持つ複雑さと深遠さを垣間見ることができます。世界観は異なりますが、プリモ・パラテュームのジュランソン・セックのようなワインが脳裏をよぎります。
一般的に、ニコラ・ジョリーのワインは難しく、最低でもデキャンタ後24時間経過してから飲む必要があるといった逸話など、良くも悪くも様々なイメージが付きまといますが、2004年のクーレ・ド・セランに関してはそのようなイメージにはまったく当てはまらないので心配は無用です。非常に高い評価を得るヴィンテージであることや、現時点で10年を超える熟成を経ていることもあってか、抜栓直後から素直にそのポテンシャルと魅力を享受することができます。際立つミネラル由来の厳しさと、圧倒的な懐の広さを有する貴腐葡萄の魅力が相まって、文句の言いようがない求心力を放ち続けます。まだまだフレッシュで若々しさすら感じますが、適度な熟成によってまさにこれからが飲み頃といった状態でもあるので、体躯の一体感そのものには十分なものが感じられます。とはいえ、ミネラル系の苦さや塩辛さが鮮烈な表情を生み出しているので、タイトなグラスを使用するのは避け、モンラッシェ用のおお振りなグラス(リーデルの448/97など)を使用することを強くお勧めします。うまくその表情を引き出すことにより、貴腐葡萄によるふくよかさ、飲み手を包み込む優しさを基調としながらも、同時に真のしっかりとした一切のブレのない意思が伝わり、クーレ・ド・セランというワインの特別性を存分に感じることができると思います。
(2015/02)