- Very Good Quality -
グザヴィエ・コペル(Xavier Copel)が興した新世代ネゴシアン「プリモ・パラテューム」を代表する1本とも言えるのが、この「ジュランソン・セック ミトロジア」です。2000年ヴィンテージはワイナートでも高評価を獲得し、2003年度のワイン・オブ・ザ・イヤーとして選ばれた20本の中にも選出されています。
南西地方の比較的マイナーなアペラシオンとなるジュランソン・セックですが、通常のジュランソンが遅摘系甘口ワインで有名なだけあってか、セックと言えども高次元なエネルギーで満ちあふれ、脅威の凝縮感と極甘口系ワインの風味を兼ね備えた風貌となっています。新樽発酵&熟成という醸造法も話題となりましたが、実際に飲んだ印象はまさに「介在不能な果実力」といったものなので、新樽の影響力に負けるようなそぶりは微塵も感じられません。
ワイナートのコメントにもあるように、このワインが本来持つ世界観や懐の深さ、そして余裕を感じさせるたたずまい、これらを存分に引き出すにはモンラッシェ・グラス(リーデルの448/97など)が必要となります。通常のシャルドネ用グラスではタイトに圧迫されてしまい、行き場を失い上昇する酸にスポットが当たりすぎてしまうので、本質的な精緻さやゆとりから来る余裕感が失われる傾向にあります。どこか窮屈な印象となり、本来の姿を見誤ってしまう可能性もあるので、事前にモンラッシェ・グラスを用意しておくことをお勧めします。
圧倒的な世界観と揺るぎないアイデンティティを兼ね備え、「ジュランソンのテロワール」「土着品種プティ・マンサンの果実力」「プリモ・パラテュームの絶対的意志」、これら三要素が紡ぎだした大いなる可能性に素直に驚かされます。凝縮されたコアの丸い果実力が最も印象的ですが、その周囲には洗練された力強い酸の衣を纏っているので、アタックの柔らかさをフィニッシュにかけてキュっと引き締められる結果となり、乱れや緩みがまったく生じません。まさに「極甘口ワイン的資質を持った超辛口ワイン」といったな印象だといえます。
その独自性には目を見張るものがありますが、かといってそれが「素直に共感できる美味しさ」として昇華されているわけではないので注意が必要です。年間生産本数1,200本という希少性もあるのでそう簡単に飲めるワインではありませんが、飲み手にも要求される事項が多々あるので、本質を垣間みるためには事前の準備と心構えが必要だと思います。そういう意味では、このワインの真の価値は飲む人次第といったところかもしれません(個人的には、通常レンジのヴァン・ド・ペイ・ドック「クラシカ」の方が衝撃度が上でした)。
(2005/12)