- Very Good Quality -
トリエステ近郊のカルソを代表する偉大な生産者であり、奇才、カリスマとも称されるのが「エディ・カンテ」。そんなカンテのワインの中で、ハイエンドに位置するシリーズがこの「セレツィオーネ(レゼルヴェ)」となります。
カンテといえば、カルソという地が持つ真のポテンシャルを具現化する究極の表現者として、その本質を追究する生産者としての一面がクローズアップされていますが、テロワールを重視す姿勢や、岩盤をくりぬいた地下セラー、はたまたラディコンと同様のボトルネックの直径が小さい特注ボトルの使用など、随所に己の信念を突き詰める姿勢が垣間みられます。
畑の標高は平均250m、樹齢は8年、8,000本/haの植樹率、1株あたりの収穫量は500〜600gとなっています。熟成は古樽のバリックで12ヶ月間。その後、酒質を安定させるためにステンレスタンクで6ヶ月間熟成されます。今回のセレツィオーネは2006年ですが、これは決してバックヴィンテージではなく、あくまでも現行ヴィンテージとなっています。ある種、数十年単位での長期熟成が可能とさえ言われるカンテならではといったところかもしれません。
テクニカルな部分は同じセレツィオーニのソーヴィニヨンと基本的には同じなので、純粋に品種の違いが世界観の差となって現れていると言えそうです。明確に異なるのが、ミネラルやアルコール感を基調としたより厳格な表情がベースになっている点で、純粋な果実味のボリュームはしっかりと込められていますが、フィニッシュにかけて痺れるような辛味が沸き立ち、アタックの柔らかさから一気に位相が反転していくので、印象としてやや向き合い難いような、圧力感や気難しさが残ります。アルコールも表記上は13.5%とソーヴィニヨンと同じですが、感覚的にはそれ以上のアルコール度数に感じます(日本酒のような佇まいを持つソーヴィニヨンに対し、ヴィトフスカは焼酎のような佇まいを感じる)。
時間が経過するとともにその良質な側面が増大し、厳しい中にも優しさを感じられるような、ホッと落ち着くような表情が最後に盛り返すこと等、いずれの品種も同じ指向性と昇華推移を見せてくれるので、これこそがカルソという土地を表現したカンテならではのスタイルだと言えそうです。ポテンシャル系の要素が強く、土着系特有の個性が明確ということもあり、あまり一般層に訴求するような世界観ではありませんが、それでも十分な魅力は放ってくれるので、一度は試してみる価値があると思います(1本のみ選ぶのであればソーヴィニヨンがお薦め)。
(2014/07)