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酒質が弱い印象だった2008年と比較すると、今回の2009年はさすがに本来の姿を持ち直したような印象があります。良年の2009年の恩恵が伺える凝縮感と果実の豊かさが非常に印象的で、ブラインドで挑んだ場合はボジョレー(ガメイ)と答えられる人はほとんどいないかもしれません。
超絶感や圧倒感といった領域にはいたらないものの、それでもカテゴリーを超えるだけのポテンシャルを見せてくれるのは間違いなく、マルセル・ラピエールの血脈を感じる確固たるアイデンティティは健在です。旨味よりも果実の甘味が先行する傾向にあの点にある種のモダンスタイルを感じ、更には納屋的な雰囲気や納豆を感じる風味があることなど、醸造学的観点からすると欠点を内包しているのは事実ですが、それでも魅力ある表情と訴求力を兼ね備えているのは確かなので、大振りのグラスで時間をかけて限界近くまでポテンシャルを引き出してやれば、最終的に得られる満足感は十分なものだと言えます。
「ボジョレー」という馴染みのあるカテゴリーとは裏腹に、初心者にとっては不快に感じる要素が少なからずあるので万人受けするような類いではないかもしれませんが、同等以上に良質な要素を兼ね備えているのもまた事実なので、出来ればポジティブになってよりよい部分を汲み取ってもらいたいところです。理論上、故マルセルが関われたヴィンテージも残り僅かとなっているので、彼に感謝するとともにその結晶を存分に享受してもらいたいところです。
(2013/02)