- Recommended -
前年に引き続いて2008年も造られることになった「ル・カンボン」ですが、ラベルデザインが変更されただけでなく、実際の中身に関しても以前とはやや異なる印象を受けます。
従来のル・カンボン像と比較すると、率直な印象としては「全体的に薄い傾向にありいたって軽やか」だと感じます。一般的なボジョレーの枠を超える世界観ではあるものの、それでもサラリとした柔らかい口当たりで、従来のル・カンボンが持つような力強さや意思の力といったものは特に感じられません。さらに、ネガティブではないものの、自然派らしく仄かに納屋っぽい風味も感じられます。決して濃くはありませんが、それでも旨味は小粒ながらしっかりと込められており、特に翌日以降に持ち越した時に感じられる「優しさの中にある仄かなラピエール節(旨味)」にはなかなか心地良いものがあるので、一新された見た目とともに、中身についても従来からは切り離して考えた方がより良い結果が得られそうです。
2008年のボジョレーは困難な作柄だったと思いますが、確かに点数評価が期待できるような内容ではなく、さらには一般層に幅広く訴求するようなスタイルでもありませんが、それでもボジョレー(ガメイ)の持つ可能性、そして本当の魅力にスポットを当てようとする姿勢は十分評価できると思います(価格帯を考えると少し厳しい気もしますが…)。明確に味がしっかりした洋食と、味は薄くても旨味がたっぷり詰まった和食、こういった差に近い部分もあるので、個人的にはよりポジティブになって良い点を尊重してあげたい気分になります(ある意味、各個人の嗜好で判断すべきものではないのかも?)。
残念ながら、マルセル・ラピエールは2010年10月10日に癌のために亡くなってしまいましたが、彼の意志を継いだ息子を応援するとともに、これまでに彼が歩んできた道の行く末を見守って行きたいところです。
(2011/04)