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僅か数年でカンパニア、いやイタリアを代表するまでに躍進した「テッラ・ディ・ラヴォーロ」。ファースト・ヴィンテージは1994年。もともとは建築家の「アルトゥーロ・チェレンターノ」の妻ドーラの祖父が所有していた土地で、家族ぐるみの仲という「リッカルド・コタレッラ」の助言によって本格的なワイン造りを開始したようです。コタレッラといえば「メルロー」のイメージがありますが、このワインは「アリアニコ」に「ピエディロッソ」と、完全に土着品種のみで造られます。
過去2年とは異なり、2007年は抜栓直後から落ち着いてその資質を披露してくれる傾向にあります。時間経過による指向性の変化は特に見られず、安定したペースで己が持つ世界観を淡々と表現しているような印象で(いたってマイペース)、単体で飲むとややインパクトに不足しているように感じるかもしれませんが、表情や要素の振幅感よりも、すべての要素の全体的な底上げが重視されているような傾向にあるので、他のワインと比較すればその圧倒的な充足感は明白となります。微細で緻密な圧倒的タンニン、凝縮した体躯に程よい酸と果実味、ボリュームとパワーがありながらも重苦しさがなく、いたってナチュラルな軽快感が広がります。前年と比較すると、体躯サイズがやや広がり、軽快さに一層磨きがかかったような印象となっています(スタイルとしては更に間口が広がり安定感が増した傾向にあり)。
これだけの充実感があり、なおかつ13.5%というアルコール度数ではありますが、あまりにも自然にグラスが進むので、その流れに身を委ねてしまうと、あっという間に1本飲みきってしまうかもしれません。翌日に持ち越しても抜栓日と同じ魅力と表情が継続されるので、構築されている世界観そのものはかなり安定したレベルだと言えます。味覚で感じるようなハッキリとした「美味しいワイン」「魅力あるワイン」とはひと味違うかもしれませんが、この浸透的訴求力はかなりのものがあるので、年々価格がこなれてきているからこそ、是非とも多くの人に経験してもらいたいと感じます。
ちなみに、このワインは2010年度版のガンベロ・ロッソで最高評価となるトレ・ビキエーリを獲得するだけでなく、イタリアの主要ワインガイド4誌すべてにおいて最高評価を得ています。
(2012/12)