- Very Good Quality -
僅か数年でカンパニア、いやイタリアを代表するまでに躍進した「テッラ・ディ・ラヴォーロ」。ファースト・ヴィンテージは1994年。もともとは建築家の「アルトゥーロ・チェレンターノ」の妻ドーラの祖父が所有していた土地で、家族ぐるみの仲という「リッカルド・コタレッラ」の助言によって本格的なワイン造りを開始したようです。コタレッラといえば「メルロー」のイメージがありますが、このワインは「アリアニコ」に「ピエディロッソ」と、完全に土着品種のみで造られます。
抜栓日のぶっきらぼうな表情と、翌日以降に持ち越してしっかり時間を与えた時の昇華感は今回も健在で、全体的な印象としては前年に垣間みられた指向性の変化が更に推し進められたような、ある種のテッラ・ディ・ラヴォーロらしさとらしくなさ、その両方が混在しているような傾向にあります。
以前よりもタイトで重量感も軽快になりつつあるように感じられますが、それでも強靭で痺れるようなタンニンは健在で、完熟果実による明確なエネルギーや、軽快かつ繊細なハーブ風味など、落ち着いた佇まいの中にもしっかりとした表情が感じ取れます。抜栓日の印象は、やや下のレンジのカンパニアワインといった像にとどまっていますが、翌日に持ち越せば明確な意思を持つ世界観を構築してくれるので、まずは真のポテンシャルを引き出すためにも抜栓後にしっかりと時間を与えて欲しいところです。
強靭な体躯から発せられる多少の収斂さはみられますが、パワー系の要素よりも繊細な表情の方が増して来ているということもあって、以前よりも向き合いやすく素直に身を委ねることが出来ます。ヴィンテージを重ねることで歩を進めていることは具に実感できますが、まだ新しいスタイルを目指す上での試行錯誤の途中なのか、どことなく畑の拡大や生産本数の増加という影響が感じられるような、やや真の部分に秘めている意思が柔らかく穏やかになっている印象があります。当然ながら土着系の表情が主ではあるものの、思いのほか整ったスタイルであることや、仄かに果梗的な青っぽさが感じられるということもあって、カベルネ・フラン系のワインや、同じカンパニアのモンテヴェトラーノのようなワインが一瞬脳裏を過りますが、これらはワインの立ち位置としての純粋な「間口」が徐々に広がっている結果だとも言えるので、その方向性としてはポジティブに受け取りたいところです。
世間の高評価とは裏腹に、以前よりも更に価格が落ち着いて来ているという現実があるので、相対的なお買い得感は向上しているようにも感じられます。しかし、決して絶対的な高評価が痛感できるような強烈なインパクトを発してくれるわけではないので、印象的な側面を重視した場合は2004年や2005年の方がお薦め度が高いような気もしてきます(価格は度外視)。もしかすると、数年早く飲むか、それとも逆に数年熟成させるかで印象が変わってくるような気もするので、新しいヴィンテージになるに連れて更に価格が下がっているという現在の状況の推移を考えると、多様な切り口において長期定点観測的に飲み比べてみるというのもかなり面白い結果が得られそうです。
(2011/10)