- Good Quality -
樹齢80年のアンソニカで造られる「ジリエーゼ」。同じ葡萄で造られる「ブジーア」がバリックを使用した近代的な製法で造られるのに対し、このジリエーゼは伝統的な製法で造られます。
色調や風味に、どことなく麦茶やビールといった麦系の面影を感じますが、そういった土着由来の表情を尊重しつつも、全体像はクリーンで無駄のない綺麗なスタイルとなっています。グリーン系のスッキリしたハーブ風味も感じられますが、表情自体に複雑さはなく比較的シンプルなので、系統としては飲みやすい部類に入ると思います。とはいえ、古木らしいギュッと身の詰まった密度感があるので、立ち振る舞いとしてはそこまで軽快というわけでもありません。
まさに「土着的な表情を尊重しながらも現代的な施設で磨き上げた」といった内容ではありますが、そこから紡ぎ出されるエネルギーが明確な美点となって飲み手に訴求するわけではないのが残念なところで、特に抜栓日の印象は可もなく不可もない「デイリーレンジのワイン」といった印象にとどまります。翌日に持ち越すと、集中力や存在力がグッと増し、抜栓日とは明らかに異なる世界観にまで昇華してくれますが、それでもデイリープラスアルファ(2〜3k円レンジ)といった範囲での表現力なので、現在の5k円という価格帯にはやや疑問が生じます。当初の印象よりも実際はポテンシャルを持っているというところが、同じ造り手の代表銘柄「テスタマッタ」の初期頃と似ているのが興味深いところですが(いわゆる深いのか浅いのかが掴みにくい)、価格に関しても同じように「マーケティング主導の高価格ブランドワイン」といった路線なのが非常に残念なところで、同じアンソニカで造られる「ブジーア」と比較しても、使用されているボトルのチープさなど、見た目だけをとっても価格差以上の差を感じるので、相対的なポジションとしてはより一層厳しいといわざるを得ません(とはいえ決して悪いワインではない)。
(2011/09)