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「シャトー・ドワジー・ヴェドリーヌ」は、バルサックの有名な「シャトー・クリマンス」と「シャトー・クーテ」のすぐ南東に位置していますが、隣には同じ「ドワジー」という名を冠したより名高い「シャトー・ドワジー・デーヌ」があることもあってか、多少陰に隠れた印象が強いかもしれません。
そこまで市場から高い評価を受けているシャトーではありませんが、1990年という素晴らしいヴィンテージの恩恵と20年を超える熟成により、結果的としてかなり良質で甘美な世界観を披露してくれます。決して「偉大なソーテルヌ」といった類いではないものの、安定感とバランスの良さが素晴らしく、豊かでしっかりした体躯内にミッチリと身の詰まりが感じられ、良質で豊富な酸と蜂蜜のようなとろりとした甘味の一体感が非常に高い充実感を生み出しています。
当初はかなり重いボディだったのかもしれませんが、今では「安定感」に寄与する程よい重量感におさまり、豊かさや果実の甘味だけに頼らない「心持ち伸びのある酸」が、重さに引きずられることのない軽快さやスッキリした後味を生み出してくれているので、まさに「今飲むことで存分に魅力を享受できる貴腐ワイン」だと言えそうです。色調は濃く、20年を超える時間の片鱗を垣間見せてくれますが、それでも全体像はまだまだ若々しく、現在の魅力を保持したまま、まだまだ熟成、そして保存するこが可能な印象なので、すぐ飲む用途としてだけではなく、ストック用としても大いに存在力を発揮してくれそうです(コストパフォーマンスを重視すると最強に近いかも?)。
パーカーがあまり高くない評価を下してくれているのが、結果的として逆に有り難い、というのが正直な感想だったりもしますが、彼が1997年に行ったテイスティングコメントの内容とはやや異なる世界観に変化しているという事実もあるので、もしかすると今回の1本はかなりポジティブな成長を経ている=ボトルによってはそこまで高い満足感が得られるとは限らない、という側面も考慮する必要があると思います(古酒特有のリスク)。とはいえ、これだけ長期間の熟成を経たボトルが現行ヴィンテージとさほど変わらない価格帯で流通しているという事実を考えると、貴腐ワインが好きな人にとっては「ケース買い」という選択肢も可能になると思うので、視点を変えれば多少のボトル差もある程度は吸収される、という考え方も可能かもしれません(1本だけの場合はある意味「運試し」になるかも?)。
(2011/07)