- Good Quality -
逸品級のバルバレスコ「クリケット・パイエ」で一躍脚光を浴びた造り手「ロアーニャ」の「ドルチェット・ダルバ」です。
伝統を守り、妥協のない品質重視の造りを行うという姿勢は手軽なラインのドルチェット・ダルバであっても健在で、実際の中身に関しても落ち着いた品位を感じる非常に質実な内容に仕上がっています。同じ2009年ということもあり、抜栓日はマリオ・マレンゴのドルチェット・ダルバにも似た朴訥とした傾向にありますが、まだまだ成長曲線の初期段階といった印象が強いこともあり、時間をしっかり与えた時の表情変化は大きく異なります。
全体的に果実味や要素の充実感は控えめですが、とにかくベースとなるコアがしっかりしており、ドルチェットらしからぬタンニン力が非常に印象的です。2日目になるとこのしっかりしたタンニンが主要素として主張する傾向にありますが、3日目まで持ち越すと仄かに緊張感が解れ、当初感じられなかった果実系由来の表情、梅系の風味や旨味が優しく表出してきます。想像以上のポテンシャルを誇る質実系ドルチェット・ダルバとなっていますが、気軽に抜栓してすぐに楽しめるという指向性ではないこともあり、場合によってはその魅力を理解できぬまま飲み終えてしまうかもしれません。しっかりと時間を与えさえすれば、自ずと真の姿を披露してくれるので特別難易度が高いわけではありませんが、それでも飲み手に対する要求度は一般的なドルチェット・ダルバとは異なるレベルにあるので多少の注意が必要です。
今飲んでも数日かければその全容は十分享受できますが、兼ね備えたポテンシャルの完全なる昇華という観点で言うと(美味しさの昇華ではなく資質における昇華)、最低でも数年程度は熟成させるべきなのかもしれません。ともかく、品種や銘柄に関わらず、ベースのしっかりした高品位なワインを求める人にとっては、なかなか挑みがいのある優れた1本だと言えそうです。
(2011/05)