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カナダ人の「パトリック・ピウズ」が2008年に設立した歴史の浅いメゾンですが、ルフレーヴでシャブリの醸造長を勤めるなど、その経験と実力は既に十分なものが備わっているようです。
酸とミネラルは豊かなものの、相対的にそれを感じさせないような方向性、角を丸く落とし鋭角な箇所をなくしたり(ヴィンテージのスタイル?)、適度な体躯のボリューム感を構築するなど、アタックにおける口当たりの良さを考慮したような性質があるので、直接的な酸の鋭さに逼迫されるようなことはありません。表層はいたってクリーンかつシンプルで、磨きあげられたような質感ではありますが、構造堅持力に優れぶれることがなく、なにより「果実の持つ力」がしっかりと体躯内に込められているので、この豊かな葡萄力は明確な美点になりそうです。
表情自体は突出するようなものではなく、純粋な点数評価としては大きく伸びることはないかもしれませんが、本質的なコアにある力は優れたプルミエ・クリュのシャブリに匹敵するものがあり、その存在力はスタンダードなACシャブリとは思えない程のものがあるので、この慎ましさの裏にある品格というものはなかなか興味深いスタイルだと言えます。ただし、その分価格の方も内容に比例するように多少高価格な傾向にあるので、純粋なコストパフォーマンスとしてはあまり分が良いとは言えないかもしれません。現実的な価格差を考えると、どちらかというとシシェの方がお買い得度が高いと言える印象だったりもします。
(2011/03)