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ヴェネトを代表する造り手であり、もはやイタリアの至宝ともいえる存在なのがこの「ジュゼッペ・クインタレッリ」。ごく一般的なヴァルポリチェッラといえば低価格で気軽に飲むタイプがほとんどですが、クインタレッリのものは翌年に陰干し葡萄を加えるという独特の製法「リパッソ(二重発酵)」で造られ、通常よりも長い6年もの樽熟期間を経て出荷されます(なのでバックヴィンテージではなくこれが現行ヴィンテージ)。ちなみにセパージュは、コルヴィーナ、ロンディネッラ、カベルネ、ネッビオーロ、クロアティーナ、サンジョヴェーゼによるブレンド。
野暮ったさの無いクリーンでスッキリした外観を持ちながら、内部には土着系の表情と明確な酸味が織り成されており、そこに酸化熟成を経たような高アルコール風味の果実味が程よいアクセントとなって加わっています(15%という高アルコールに反して非常に心地良く飲める)。抜栓直後はやや漠然としているものの、1時間ほどで各要素から紡ぎ出される表情に光が見え始め、余裕を持って翌日に持ち越せば、渾然一体となったその妖艶美を存分に堪能することが出来ます。当初は酸化熟成系の風味が明確な個として感じられるものの、完全に開花すれば過熟葡萄のポジティブな要素にのみスポットを当てたような資質に変化し、リパッソによって生じるその表情が非常に印象的なものになります(パラッツォ・デッラ・トッレが好きな人にとってはまたひと味違った面白さがあるかも?)。
基本スタンスは、同じヴェネトで造られる「ルベルパン」にも共通するものがあり(とはいえこちらの方がよりスマート)、その表情を「個性」ととるか「癖」ととるかでやや評価が分かれるかもしれませんが、それでも「さすがクインタレッリ」といえる明確なエネルギーと昇華力は健在なので、絶対的に高いその価格さえ苦にならなければ、それ相応の満足感は十分得られると思います。ルベルパンと同様に万人受けするスタイルではありませんが、逆に言うとイタリアワインが好きな人にとっては避けて通れない道(そして通る価値のある道)とも言えるので、機会があれば是非試してもらいたいところです。
(2010/03)