- Good Quality -
この「マギル・エステート」は、数多くあるペンフォールズのワインの中でも最高峰のカテゴリーとなる「ラグジュアリー&アイコン・ワインズ」に位置しています(有名な「グランジ」などと同じカテゴリー)。
ごく一般的な「オーストラリアのシラーズ」とは指向性が異なり、かなりスッキリとした整然感のある容姿が印象的で、ボリュームや凝縮性よりも酸や全体のバランスを重視するなど、各要素の統合感やシングル・エステートならではの世界観構築に向けて歩を進めている傾向にあります。絶対的な主張や個性を突き通すタイプではないので、より多くの人に対してその「品格」を訴求してくれそうですが、その反面、それほど大きなインパクトは持ち合わせていないので、グラス一杯程度軽く飲むだけではその真の良さは伝わってこないかもしれません。
抜栓日の印象は、シラーズらしからぬボディの豊満さや柔らかさが主立っていて(メルロー的!?)、タンバランバと同じように異なるセパージュの印象も受けますが、それでも翌日に持ち越すと全体がよりタイトに拘束され実直さを増し、3日目になるとそこから表情が解れ僅かな開放感とともに旨味、果実味、梅系風味などがじゅんわりと滲み出てきます。
さすがに最上位に位置するワインなだけあり、自然に向き合うことでその歴史あるマギル・エステートならではの美麗な表情を披露してくれますが、それでも「1万円クラスのワイン」に期待する絶対的エネルギー感やプラスアルファ要素が明確に伝わってくるわけではないので、こういったハイエンドのワインを飲みなれていない場合はその出費に見合った満足感が得られないかもしれません(ごく普通に「良質な美味しいワイン」で終わってしまうかも?)。とはいえ、同じペンフォールズでも日常レンジのワインとは一線を画す造りになっているので、クヌンガ・ヒルなどの「低価格でも高評価なワイン」に見られるスタイルが馴染めなかった人であれば、それ相応に試す価値はあると言えそうです。
(2010/02)