- Good Quality -
トゥア・リータが手掛けるスタンダードアイテムのひとつで、このロッソはサンジョヴェーゼ65%、カベルネ・ソーヴィニヨン35%というブレンド比率で造られます(同じ名前のビアンコやロゼもあり)。
トスカーナの持つ明確な力が感じられますが、スタイルとしては陽的でわかりやすい仕立てとなった、いかにも「トゥア・リータのワイン!」といった方向性なので、ある意味トゥア・リータが好きな人にとってはたまらない1本だと言えそうです。
サンジョヴェーゼらしい縦に貫く明確な酸があり、適度なサイズと現実的な重量感がキッチリ維持されていますが、その中身は思いのほかしっかりと凝縮しており、体躯に行き渡るタンニンや過熟感のあるプルーン系風味の明快な表情によって、いたってモダンな立ち位置が強調されています。よりサンジョヴェーゼらしい土着系の表情を強調したい場合は細身のグラスを、よりモダンでカベルネ的な豊かな体躯を強調したい場合は大振りなグラスを、それぞれ意図する目的に応じて使い分ければ、一層このワインの持つ世界観を引き出せると思います。
文句なく楽しめるワインではありますが、内包する美の方向があくまでも人の手によって生み出された「人工美」といった様相を呈しているので、真のサンジョヴェーゼ道を追い求めるようなストイックさや、存在そのもののから解き放たれるようなエネルギー感は特に兼ね備えていないとも言えます。トスカーナらしい力感や土着品種の表情を持ちながらも、いかにして多くの人に楽しんでもらえるか、そしてその一般的尺度でキッチリ評価してもらえるか、このあたりを考慮しうまく表現、そして構築している印象があるので、やはり根っからのトゥア・リータ派や、もしくはモダンで洗練されたニューワールド系のワインを特に好む人に飲んでもらいたいと感じます。
(2009/09)