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当初、スペインの風雲児「テルモ・ロドリゲス」との共作ということで、一躍世間を賑わせた「バルデリス」です(現在はイサック・フェルナンデスが醸造を担当)。
従来のややピンと来ない性質や、内容の割に控えめな厚みなど、コアにある資質は従来のスタイルを継承していますが、各要素が紡ぐ表情に力と緻密さが感じられることもあり、総じて良質な構成力を発揮してくれます。まだまだ完全とは言えず課題も見受けられますが、現状において兼ね備えた駒はしっかり使い切った傾向にあるので、総合的にはヴィンテージの恩恵を素直に受けた良質なスタイルだと言えそうです。
抜栓日から素直に楽しめるのが印象的で、不必要な重量感や鋭さがなく、滑らかな質感からくる程よい飲み口になっています。しかし、翌日に持ち越し温度も上がってくると、インクや塗料などを感じるアルコール系の性質が強くなり、どことなく理科室にいるような空気感が立ちのぼってきます。やや重めで鈍い印象ではありますが、初日の印象やそのポテンシャルを考えると、それほどネガティブに捉える必要はないのかもしれません(構成要素の良さ自体は大きく変化せず)。
このヴィンテージのみを単体で飲んだ場合はそれほど高い評価が得られないかもしれませんが、過去のヴィンテージとの比較や、同レベルの評価を受けた他のスペインワインを含めての相対評として考えると、この価格帯としては十二分に力を発揮してくれていると感じます(2003年基準だとその進化は明確)。後は、兼ね備えた良質な側面が通常レベルの作柄年であってもしっかり開花するよう、期待を込めてじっくり見守りたいところです。
(2009/04)