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1945年にグラッパを造り始めたという、まさに「真のグラッパ職人」とでも言うべき「ロマーノ・レーヴィ」ですが、残念ながら2008年5月1日に逝去してしまいました(享年79歳)。彼の造るグラッパは市場評価が非常に高く、もともと出荷量も少ないのですが(蒸留、熟成、ボトリング、ラベルまで、すべてにおいて本人の手作り)、事実上「現存するもので最後」という状態になってしまったので、今後は今まで以上に入手が困難になりそうです。ただし、後継者となるファブリツィオ・ソブレロが、同じ直火式の蒸留機を使ってグラッパの生産を続けているので、ロマーノの直筆ではなくプリントラベルであれば、今後も入手は可能なようです。
レーヴィのグラッパといえばやはり「手描きラベル」が印象的ですが、プリントラベルの方は若干価格が低い傾向にあるので、見た目を特に重視しない場合は、コストパフォーマンスを優先してプリントラベルを選択するのも十分アリだと思います(一応ボトルごとにワンポイントで異なる手描きのマークが入っています)。ちなみに、ラベルに記された名称はグラッパではなく「アクアヴィーテ」となっていますが、中見に関しては手描きボトルと特別な違いがあるわけではなく、異なるのは純粋に「見た目のみ」ということのようです。とりあえず、現在蒸留所に残存するボトルにはすべてプリントラベルを貼って出荷されるという事なので、今後新たに手描きラベルのロットが出荷される事はなさそうです。
多様な造りがなされることもあり、「まったく同じものは2つとない」というのがレーヴィのグラッパの特徴とも言えますが、今回の1本はやや色調が濃いめで、細かく浮遊する澱(?)が多くあることなど、同時に飲み比べた手描きボトルとは明らかに見た目が異なります。
スタイルはレーヴィらしくいたって実直で、アタックにガソリンを彷彿とさせるような力強さや揮発要素も感じられますが、思いのほか角が丸くたおやかで、縦横への広がりや多様性ある表情、そしてコアにポッと煌めく華ある様が印象的です(リリース当初とは異なり、後味にかけての円熟味とフルーティーさが際立ってきている印象)。まさに色調から来る印象を反映した内容となっており、フィニッシュにかけての仄かな優しい広がりなどからして、よりじっくり向き合いたい気分になります。縦方向の振幅が強く、ストレートに響いてくる傾向にあった手描きボトル(色調がやや薄めのロット)とは指向性が異なりますが、大きな世界観としては同質の傾向にあるので、それほど大きな違和感はないと思います。最終的には飲み手の嗜好次第だとも言えますが、当初はこのプリントラベルの方が秀でている要素が若干多いと感じたものの、長い熟成を経てからの試飲だと(今回は最初の試飲からさらに10年以上ボトルで熟成)、最終的には手描きボトルの方が極僅かに上回っているような印象を受けます。
新たな供給がなくなることで、名実共に「伝説のグラッパ」となりつつありますが、絶対価格がかなり高いこともあって、正直なところ一般向けとは言い難いものがあります。決して「群を抜く美味しさ」を誇っているわけではなく、あくまでも「他とは違う個性を持っている」といったものなので、ある意味、自ら付加価値を見出す事のできる人にしかお薦めできないかもしれません。とはいえ、唯一無二な存在である事に違いはなく、ロマーノが生前手がけたボトルに関しては、今後は欲しくても手に入らない状態になるのは間違いないので、気になっている人は早めに手を打っておいた方が無難です(後継者が生産したグラッパであれば無理なく入手可能)。
(2008/08、2019/03、2021/08)