- Very Good Quality -
抜栓直後は妙に構造の緩さが気になりましたが、品の良い樽のバニラ風味とリカーゾリらしい資質がより良い世界観を生み出しています。同じバローネ・リカーゾリが造るキャンティ・クラッシコ・リゼルヴァ「ロッカ・グイッチャルダ」との違いが気になるところですが、明らかに表情や方向性が異なるので、明確なカテゴライズが行われていると推測できます。なかでも樽によって付加される要素やスタイルに差異が感じられ、丸く優しいバニラ風味で果実の魅力を大きく包み込むその姿は、ロッカ・グイッチャルダに見られた「樽の風味を強くぶつけ酸を活かしたもの」とは正反対と言えるかもしれません。
良い意味でキャンティらしくないスタイルであり、想像を遥かに超える程のエレガントな表情を見せてくれます。1998年の印象や、過去に飲んだ秀逸なキャンティ達は、みなそれぞれに圧倒的なエネルギーやパワーを堅持していましたが、1999年のカステッロ・ディ・ブローリオは流麗でスマートな指向性が強く、まったく乱れることのないフォーマルな空気感を漂わせています。
迫りくるようなスケール感がなく、明確な感動を得られるわけではないので評価が分かれそうな気もしますが、適度なバランスの良さと完成度の高さが、リカーゾリが指し示す「カステッロ・ディ・ブローリオ」としてのアイデンティティを明確に確立させているので、このスタイルを受け入れることさえできれば、その大いなる魅力によって高い満足感が得られると思います。
ちなみにこのワインは、2003年度のガンベロ・ロッソで最高評価となるトレ・ビッキエーリを獲得した、1999年ヴィンテージとしては4本しかないキャンティ・クラッシコのうちの1本となっています。
(2004/02)