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2004年からワイン造りを始めた歴史の浅い造り手ではありますが、既に非常に高い評価を受けており、2010年度のガンベロ・ロッソで最優秀栽培家の称号となる「イル・ヴィティコルトーレ・デッランノ」を獲得するなど、優れた栽培家としての名声を勝ち得ています。
セパージュはプリミティーヴォ(カリフォルニアのジンファンデルと同じ品種)。ステンレスタンクで発酵後、新樽比率50%のフレンチオークバリックで9ヶ月間熟成、更に瓶熟9ヶ月を経てリリースされます。
圧倒的な熟度の高さからくる妖艶な果実の甘みと、超高アルコール(16%)由来の辛味がバランスすることで生まれる個性的な世界観こそがエスの魅力ではありますが、そのスタイルが故に早くから気軽に楽しめるというのも大きなメリットだと言えます。やや化粧っ気のある彩度を感じる表情が前に出る傾向にありますが、それでも甘草のような漢方系のスパイスを伴う凝縮した強い甘みがストレートに突き抜け、そこからアフターにかけてヒリヒリする明確な辛味がボディ全体を引き締め、不思議な一体感と訴求力を発揮してくれます。表層的な観点としては、確かに低価格帯のワインに共通するようなある種の親しみやすさがベースとなっていますが(敢えて悪く言うとやや安易な表情)、それでも一口飲んですぐに分かるレベルでエネルギー量が高く、ハイエンド系ワインならではの説得力を存分に発揮しながらも、無理なく心地よくスルスル飲めてしまう不思議な魅力を持っているのが興味深い点でもあります。
相変わらず、アルコールが高いと実感できるのになぜか飲みやすいという不思議な流麗さが印象的ですが、基本的には尖ったスタイルの個性的な世界観ではあるものの、それでも以前よりも更に親しみやすく無理なく飲めるようになっている印象でもあるので、ここに来て遂に価格が上昇傾向にあると言うのが、かなり大きな懸念材料になりつつあるとも言えそうです。
(2023/03)