- Good Quality -
フランス語で「真ん中」を意味する「ル・ミリュウ」。地域密着型のワイナリーとして、長野県安曇野市の耕作放棄地だった雑木林を地元の有志とともに開墾し、10haの内1.5haが自社畑のメイン圃場となっています(標高600m前後)。
セパージュはピノ・ノワール100%。アルコール度数は11.5%。生産本数は僅かで約600本のみ。色調はややくすんだ褐色で、香りからは非常に甘い要素が広がり、どこかモワルーのようなやや甘めなスタイルが脳裏をよぎります。実際の風味にもムッチリとした妖艶な甘味が感じられますが、同時にヒリッとした辛みのあるスパイシーさや意外としっかりした外骨格のおかげもあってか(実際の数値以上にアルコール感がある)、香りから感じられるイメージとは異なり特に甘味だけが先行するようなことはありません。
全体的に他のキュヴェとはやや異なる世界観で、さらなる熟成感が広がる独特な退廃感を持った甘い古酒的ピノ・ノワールと言った印象でもありますが、それでも熟成が進んでいるというよりは、むしろ最初から熟成感を前面に出したようなスタイルで造られているような印象で、その妖艶な果実味には実際の古酒とは異なりしっかりとした安定感が感じられます(なので抜栓後数日経過させても問題なし)。この熟成感のある独特なスタイルをどう受け取るかで多少評価が分かれそうな印象ではありますが、それでもル・ミリュウのフラッグシップとなるシリウスシリーズの中では一番可能性を感じる仕上がりなのは確かなので、このご時世に3千円台で購入できてしまうという驚きの事実を考慮すると、かなり興味深いアイテムだと言えそうです。
(2023/03)