- Good Quality -
フランス語で「真ん中」を意味する「ル・ミリュウ」。地域密着型のワイナリーとして、長野県安曇野市の耕作放棄地だった雑木林を地元の有志とともに開墾し、10haの内1.5haが自社畑のメイン圃場となっています(標高600m前後)。
2019年のセパージュは、メルロー67%にカベルネ・ソーヴィニヨン33%。アルコール度数は11.5%。日本のワインらしく軽やかな立ち振る舞いの流麗なスタイルで、葡萄品種から想像する表情とはかなり異なり(ある意味品種感がほとんどない)、水のように流れる心地よさがある種の特徴になっています。とは言え、表層的な軽やかさとは打って変わって、その実、ボディ内部には意外と充実感や緻密さがあり、不思議としっかりとした酒質が伝わってきます。純粋な果実感も「葡萄」というよりは「林檎」に近い印象で、相対的に酸が主体になっている傾向にあり、僅かに酢酸や退廃感もありますが、それでも全体像としてはなぜかポジティブで素直に訴求する傾向にあります。時間とともにオフフレーバーは減衰し気にならなくなり、逆に充実感は増す傾向にあるので、基本的には数日かけるぐらいのペースでゆっくり向き合う方が満足感が高くなりそうです。むしろ、短時間のテイスティングでは過小評価してしまう可能性もあるので、とにかく慌てずじっくり向き合うことをお勧めします。
清涼感のある表層に加え、コアとなる部分に滋味的な要素を持っている点など、不思議とブルゴーニュのワインが持つ魅力にも近い雰囲気があるので、メルローやカベルネといった品種のイメージは一旦忘れ、ル・ミリュウという造り手が生み出す「安曇野」という地のスタイルを素直に享受するスタンスで向き合えば、より良い結果が得られる印象でもあります。
(2023/03)