- Very Good Quality -
紫系のインキーな資質で、ニューワールドらしい高アルコール(15%)仕立ての明快なスタイルではありますが、それでも瑞々しいフレッシュさを維持しながら、緻密で滑らかな充足感が同時に感じられ、ある種不思議なバランス感覚が実現されています。高い技術力がベースにあり、思い描く最終的なゴールに向かって築き上げられたかのような実像感が明快で、今からでも無理なく飲めるという事にも素直に驚かされます。とはいえ、現状だと抜栓直後はやや酒質がサラリとした傾向にあり、体躯の丸みや酒質が持つある種の軽快さの方がやや前に出るので、基本的にはデキャンタなどでしっかり時間をかけて空気に触れさせるか、もしくは翌日以降に持ち越すぐらいゆっくりと向き合う方がベターな印象です(3日目でも尻上がりに良くなり一体感が増していく)。
開栓後にしっかりと時間を与え、十分開いた状態になると、表層的な滑らかさや軽やかな瑞々しさはそのままに、ボディの中心にしっかりと重心が感じられ、素直な美味しさと高いポテンシャル、その両方を過不足なく感じることができるようになります。確かにニューワールドらしい甘みは感じられますが、他にはあまり見られない不思議な艶やかさがあり、その若々しい妖艶さから発せられる魅力は素直に訴求する印象です。
唯一気になるのは価格の高騰で、為替の問題もあるので仕方がないとは思いますが、以前とは異なり日常で気軽に飲めるレンジを超えてしまっているので、圧倒的なコストパフォーマンスを誇るワインではなくなってしまったのがやや残念なところではあります。
(2022/12)