- Very Good Quality -
バローロの生産エリア最北に位置する「ヴェルドゥーノ村」のグラン・クリュとも言えるのがこの「モンヴィリエーロ」。元々は同名の葡萄園が所有する区画で、最初に醸造されたのは2000年ヴィンテージ。そして2007年まではスタンダードなバローロにブレンドされていましたが、スカヴィーノ家によって購入されたことで以降は単一クリュとしてボトリングされています。畑の標高は310mで南東向き、土壌は石灰岩で白亜質の鉱脈が混ざり合っています。植樹は1968年〜2005年。ちなみに今回のロットは、オールドヴィンテージとは思えないほどラベルもコルクもかなり綺麗で(蔵出しに近いレベルの真新しさ)、状態は非常に良好な反面、価格は通常の現地流通価格よりも割高傾向にあります。
大樽や古樽系のニュアンスを主体とした樽香が大きく広がり、苦みを伴う膨大かつ重厚なタンニンが基軸となった、これぞバローロとも言える力強さが印象的です。それでもボディそのものはややフラット寄りで、表層の滑らかさや流麗感、適度な酸、そして重さを感じさせないエレガントな立ち振る舞いなど、重厚さと軽妙さの折衷タイプとして意外とバランスは取れている印象でもあります。内包するタンニンは膨大ですが、果実要素は熟度が高く、同時に10年の熟成によって程よく妖艶さが感じられ、ちょうど若さからくる荒々しさを半歩程脱却し、これから熟成感が少しずつ出始めるような状態となっています。十分初期の飲み頃には到達していますが、それでも長期熟成を前提としたかのような長寿命性を兼ね備えているので、今後も10年単位での熟成が可能となっています。
当初の印象だと、偉大なヴィンテージに見られるような圧倒的な世界観ではなく、2012年というやや弱めのヴィンテージだからこそ出来るような、多大な努力が感じられるような内容でしたが、それでも翌日に持ち越すことで表情が一変。重厚なタンニンと妖艶な果実要素の距離が一気に縮まり、大幅に一体感が増すとともに、熟成によって到達するであろう完全な姿の一端が垣間見れ、非常に高い満足度と訴求力を放ってくれます。このあたりは、さすがパオロ・スカヴィーノの手腕と言ったところで、モンヴィリエーロというクリュの持つポンテンシャルも十分に感じ取ることが出来ます。とは言え、バローロとしてはかなりマイナーなクリュということもあり、知見を広げるためには非常に有用であるものの、それでも純粋なコストパフォーマンスとしてはかなり分が悪い傾向にあるので、あくまでもバローロに対する理解をより深めたい層に対して、ピンポイントに訴求するような立ち位置だと言えるかもしれません(一般層にはラ・モッラやモンフォルテ・ダルバのようなメジャー産地のクリュの方がよりお薦めかも)。
(2022/11)