- Very Good Quality -
セパージュは全てカベルネ・フラン100%ですが、異なる土壌から特定の味わいを持つ葡萄が生まれることに気づき、最終的に3つの区画からそれぞれ独自のラベルでボトリングされることになったのがこのカンポシリーズ。標高600mと3つの区画の中で最も標高が高いカンポ・ディ・カマージは、割れた石英と石灰岩で構成された痩せた土壌で、広さは1.5ha、樹齢は26年、密植度は10,000本/ha、生産本数は1,400本のみ(裏ラベルでは1,650本)。熟成はフレンチオーク樽で8ヶ月、セメントタンクで11ヶ月。
他のキュヴェよりも一体感ある状態なのが印象的で、抜栓直後から普通にバランス良く楽しめます。確かに他のキュヴェと同様に凝縮感と緻密さに長け、強固なタンニンによる重厚感やドライな収斂要素は健在ですが(後味にかけてかなり口中が乾く)、それでも熟成の変遷レベルが一段階進んでいることもあってか、翌日に持ち越した場合の表情の変化も他のキュヴェより穏やかな傾向にあります。
相対的にはよりハイトーン系の清涼感やグリーンノートがあり、加えて樽要素もしっかり感じられる傾向にあります。チョコレートやタバコ、乾燥した枯れた木材など、各要素が一体となったボディからは多様なニュアンスが感じられ、凝縮した果実の力に負けないような仕立てがなされている印象を受けます。ポテンシャル系の要素と味覚で楽しめる要素のバランス感覚が、他のキュヴェとはやや異なる印象でもあり、醸造的側面における指向性がしっかりと伝わる傾向にあるので(困難ヴィンテージを乗り越えるための造り手の苦労が感じられる)、3つのキュヴェの中では最もレストランなどの業務店で使いやすそうな印象だったりもします。
2017年という困難なヴィンテージでも、明確な個性と存在感、そして良好なバランス感覚に基づく高いポテンシャルをもつハイエンドワインに仕上げているということは素直に賞賛すべきで、生産本数がかなり少なく価格も高いという問題はありますが、それでもトスカーナという地におけるカベルネ・フランの可能性や、土壌の違いによって異なる特性を持つワインが生まれることを具現化している点など、そのテロワールを理解するための一助となるのは確かなので、機会があればぜひ各キュヴェの飲み比べを試してもらいたいところではあります。
(2022/10)