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2015年、標高298〜349mというセントラル・オタゴのピサ地区に自社畑を取得し、畑の土壌、標高、傾斜の向きによって6つの区画に分け、それぞれに適した5つの葡萄品種を植樹。そして遂に2019年、畑の横に醸造所を新設し、初めて自社畑から造るワイン「フェルム・ド・サトウ」が誕生。今回の「シストゥ」はシュナン・ブラン100%で造られ、1億5000万年前のシストを最も多く含む区画の畑(サトウ・ピサ・ヴィンヤード)で栽培されています。農薬は使用せずに栽培し、2019年4月26日と30日に手摘みで収穫(20hl/ha)。フレンチオークの古樽で16ヶ月熟成し、ボトリング前に20ppmの酸化防止剤を添加。無清澄無濾過で2020年9月3日にボトリングし、生産本数は僅か1,561本のみ。
見た目はやや黄緑にシフトしたしっかりとした黄色の色調。表層的なスタイルはラティピックシリーズとは異なるものの、それでも全体の纏まり感や果実の明確な甘みなど、終始穏やかな表情で早くからでも十分楽しめるという明確な共通点があり、現在進行形としての今のサトウ・ワインズの世界観がハッキリと打ち出されています。
近年最も可能性を感じる白葡萄品種の一つとも言える「シュナン・ブラン」で造られるワインということもあり、現在世界的にトップレベルの水準をひた走る南アフリカとの違いが最も気になるところではありますが、結論から言うとそのスタイルは完全に別物になっています。堅牢感のある緻密なコアに、爽やかさを感じる仄かなグリーンのニュアンス、そして全体を引き締めるヒリヒリとした辛味を感じさせながらも、最終的には穏やかな表情へと誘う明快な甘味など、モノセパージュとは思えない多層的な構成で組み上げられ、まさに日本人らしい丁寧な仕事で生み出されていることが具に伝わってきます。
圧倒的なエネルギーやポテンシャルを打ち出すアルヘイトなどと比較すると、パッケージングの妙やバランス感など、より細部に渡る構成面に力点を置いているような印象でもあり、ある種、ニューワールドらしい自由奔放さよりも緻密な手仕事による人間の技を感じる仕上がりになっています。多くの人が素直に楽しめる親しみやすさを維持しながらも、更に今後樹齢を重ねて進化していくであろう将来像に期待したくなるような、大きな可能性を感じる仕上がりだとも言えます。現時点では、これまでの全サトウ・ワインズの中で最も可能性を感じる仕上がりなので、そのポテンシャルが完全開花した暁には、サトウ・ワインズを代表するような傑出したキュヴェになるかも知れません(価格がやや高めなのでコストパフォーマンスが一番の懸念材料)。
(2022/07)