- Good Quality -
競輪などで活躍した元プロサイクリスト「飯島規之」による第二の挑戦がワイン造り。ワイン名の「パシュート」は、自身が過去、自転車競技のパシュート(追い抜き)の元日本記録保持者だったことが由来で、他にも探求や追求という意味があるようです。
畑は千曲川左岸、標高660mの八重原台地の南東の縁にあり、東御市と立科町の境目に位置する南東向きの斜面となります。今回のソーヴィニヨン・ブランは、東御市にある「メイン畑」と、立科町にある「第3コーナー畑」で栽培された、完全自社畑100%によるキュヴェで、フレンチオーク樽による発酵と熟成後、ノンフィルターでボトリングされています。
爽やかでクリーンな表情を持ちながらも、ボディは密度を感じるリッチなスタイルで、日本のワインとは思えないレベルでしっかりと濃密な味が乗っている傾向にあります。しかも分かりやすい端的な樽風味は一切なく、ミッチリとしたエキス分を含むボディを下支えする要素としてうまく全体に馴染んでいる印象です。一般的にソーヴィニヨン・ブランのワインと言うと個性的なハーブ風味を想像しますが、そういった好き嫌いが分かれる要素は感じられず、むしろ厚みを感じるフルーティーな要素がメインになっているのが非常に印象的です。
翌日に持ち越すと、熟した赤いリンゴや梨のようなニュアンスが広がり、抜栓日とはまた異なる表情を見せてくれます。僅かに澱が底に溜まってはいるものの、ワインが濁るほどの量ではないので特に気にする必要はなさそうです。流石に最後の一杯となると、若干の緩みが感じられるようにはなるものの、それでも全体的なクオリティは非常に高く、細部に渡って高い意識でワイン造りに向き合っていることが伝わってきます。異業種からの転身だからこその本気というのが見事に結実している印象でもあり、歴史の浅い造り手がいきなりこのクオリティを発揮できるのであれば、今後の進化と発展にかなり期待が持てそうです(シードルのクオリティも高い)。
(2022/03)