- Good Quality -
ワイナリー設立からまだ間もないこともあり、自社畑から造られるワインのリリースはもうしばらく待つ必要がありそうですが(2019年が初収穫)、今回の「ベリーA発光体」は山形県産のマスカット・ベーリーAを購入して造った「ヌーヴォー」スタイルのキュヴェになります。
発酵は全房によるセミマセラシオンカルボニック。自然派スタイルのレヴァンヴィヴァンらしく、シードルと同様に野生酵母で発酵が始まるまで待ち、補糖や補酸も行わず、そのまま無清澄、無濾過、亜硫酸の添加もなしでボトリングされます(直前までずっとシュール・リー)。基本的にはビジャージュとルモンタージュも行いませんが、発酵活性化の為に初期段階(4日〜1週間程度)のみ、バケツを使った軽いルモンタージュを限定的に行なっているようです。
オフフレーバーが皆無だったシードルとは異なり、こちらはハッキリと分かる還元臭が広がるので、正直、飲み手を選ぶ自然派らしいスタイルと言えるかもしれません。野性味のある山葡萄的な表情に、かなりしっかりとした酸が感じられ、まるで紫蘇ジュースを彷彿とさせるような「甘酸っぱさ」が非常に印象的です。ヌーヴォーというイメージから想像する以上に濃密で緻密な果実のコアが印象的ではありますが、それでも独特の個性を放つそのスタイルからして、決して万人受けするようなタイプではなく、むしろピンポイントにターゲットを絞ったニッチ向けな印象が強く残ります(そもそも現状だと抜栓直後はかなり「すっぱい」)。
ただし、翌日に持ち越すと表情は一変。還元臭はかなり減衰しそれほど気にならないレベルになり、当初際立っていた「すっぱさ」もすっかりボディに溶け込み、相対的に緻密なコア部分にスポットが当たるようになります。兼ね備えた本質的なポテンシャルは想像を遥かに超えて高い水準にある印象ですが、そもそもの立ち振る舞いや指向性が完全に我が道を行く傾向にあるので、やはり「好き嫌いがかなりハッキリ分かれる」という世界観に変わりはなさそうです。とはいえ、それ故に飲み手の嗜好にピタリとハマった場合は、非常に高い満足感が得られそうな印象でもあります(個人的には自社畑から造られるキュヴェに期待したい)。
(2022/02)