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明治時代から葡萄栽培が行われている長野県塩尻地区の中から、より特徴的なメルローが収穫出来る畑を選抜したのがこのキュヴェ。年間生産本数約800本、基本的にはワイナリーでのみ発売される限定品となります。
日本のメルローと言えば、良くも悪くもピーマン香がハッキリと感じられる独特の個性を持っている傾向にありますが、そういった要素をポジティブに捉え、それを生かす方向として現代基準で進化、そして発展させたような世界観となっています。個人的には、昔ながらの日本のメルローにあまりポジティブな要素を感じなかったのですが、それでも現代における醸造技術の進歩でどのようなメルロー像が展開にされるかに非常に興味を持っていたこともあり、思いがけず良い意味で裏切られた印象でもあります。青みのあるハーブ風味はしっかり感じられるものの、同時に瑞々しくフレッシュで、充実感のあるの果実の甘みとボディが程よく一体化し、素直に楽しめる表情を構築しているのが非常に印象的です。翌日に持ち越すとハーブ系の要素が少し落ち着き、フレッシュな酸、緻密な果実の甘み、そしてチョコやバニラを感じる樽要素など(熟成はオーク樽で約19ヶ月間)、高いレベルでバランスよく相互作用し素直に楽しめる魅力として昇華している傾向にあり、どことなく良質なボルドーとの共通項が脳裏をよぎります。
生産本数が少なく入手も困難で、なおかつ思ったよりも価格が高めなので、純粋なコストパフォーマンスとしてはやや分が悪い傾向にありますが、それでも昔ながらの日本のメルロー像が脳裏に残っている人にとっては、昨今の技術的な進化による変貌にちょっとした驚きを感じるかもしれません。ある種、ソーヴィニヨン・ブランがニュージーランドで新たな可能性を見出したように、日本固有のメルロー像として一定の可能性を感じるのは確かです(ネガティブな要素を一方的になくすのではなく、それ以外の要素で補いポジティブな指向性に変化させている手法が非常に興味深い)。
(2022/01)