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歴史ある造り手「ベナンティ」を代表するアイコンワインの一つがこの「ロヴィッテッロ」。セパージュはネレッロ・マスカレーゼ(90〜95%)とネレッロ・カップッチョ(5〜10%)の混植で、エトナの伝統とも言える土着2品種のブレンドによる相互補完を現代でも貫いています。畑はカスティリオーネ・ディ・シチリアの注目産地でもある「ロヴィッテッロ」にあり(コントラーダ・ダファーラ・ガッルッツォ)、標高は750m、アルベレッロ仕立てで樹齢は平均約80年(1930年に植樹)。2015年の生産本数は僅か2,988本のみ。
色調は淡くやや褐色がかっていて、ロヴィッテッロらしい酸主体のスタイルになっています。見た目の印象通り、全体的にやや熟成が進んだ印象で、ベースとなる酸にも退廃的な要素がかなりハッキリと現れています。果実味そのものもかなり穏やかで優しい表情を持っていて、良く言えば滋味深く、悪く言えば薄く弱いといった全体像ではありますが、それでも古酒的な風貌を持つ世界観には不思議な魅力があるのもまた事実です。
抜栓直後の最初の一杯の印象だと、正直あまりポジティブな印象は受けませんが、それでも時間とともに滋味を感じる浸透力が増していく傾向にあり、ゆっくりと向き合えば向き合うほどに不思議と引き込まれていきます。純粋な構成要素としては、決して高い評価ポイントを獲得するような系譜にはないものの、それでも短時間でのテイスティングでは過小評価してしまう可能性が高いので、やや注意が必要かもしれません。
全体的に薄めのボディと酸で構成されていることもあってか、現代的なエトナ(ネレッロ・マスカレーゼ)のイメージに従い、ブルゴーニュ向けのような大ぶりなグラスを使ってしまうと、逆に美点が掻き消されてしまう傾向にあったので(端的に言うと薄くて酸っぱいワインになる)、基本的にはボルドー向けのような大きすぎないグラスの方が向いている印象です。その独特の個性や存在感は、甘くてリッチなモダンワインに慣れ親しんだ層には刺さらない世界観だとも言えるので、手放しに万人に勧められるようなタイプではありませんが、それでもかなり興味深い表情を持っているのは確かなので、古酒系の枯れたワインが好みの人には一定量刺さりそうな印象でもあります。
(2021/01)