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カリフォルニアのローダイでワイン造りを行う家族経営ワイナリーが「オーク・ファーム・ヴィンヤーズ」。一般的にはボルドーワインのブレンド用補助品種として使用されているプティ・ヴェルドを、まさかの単一品種でボトリングした非常に珍しい一本となります。オーク・ファーム・ヴィンヤーズでは、2016年もプティ・ヴェルドのワインはリリースされていましたが、2014年に自社畑に植樹したプティ・ヴェルドが樹齢3年を迎え、ようやくリリースできるようになったこともあり、この2017年が「エステート・グロウン」としてのファースト・ヴィンテージとなっています(生産量465ケース)。
ボトルに直接刻印されたオリジナリティ溢れる意匠が印象的で、見た目としても非常に高級感があります。色調はかなり濃く、透明感はほぼゼロ。抜栓直後はやや彩度が高い紫系のニュアンスがあり、熟したプラムのムッチリとした甘味に、仄かにピラジン系のグリーンのニュアンスが感じられますが、14.5%という高アルコールに、ややポッテリとしたボディと過熟系の果実味、穏やかなバニラ、さらにそれらに負けない豊かな酸と、各要素が充実していることもあってか、ネガティブな印象を受けるような青臭さは皆無です。
かなり端的な世界観で、良くも悪くも「これぞカリフォルニア!」と言った、一昔前の典型的なスタイルを彷彿とさせるような濃密さが印象的ですが、それでも造りそのものは非常に現代的で、重さを感じて飲み疲れるようなことはなく、むしろ心地よくサクサク飲めてしまいます(酸のバランスが良好な印象)。抜栓直後はやや訴求力に欠ける瞬間もありますが、抜栓後30分〜1時間程でも徐々にこなれていく傾向にあり、翌日に持ち越せばかなり良好に昇華した姿を披露してくれます。圧倒的な世界観を披露するような系譜ではないので、純粋な点数評価が伸びるようなタイプではありませんが、それでも純粋な造りは非常に良好で、個人的には高く評価するべき素質と可能性を秘めていると感じます。実際、日本での市場価格は現地流通価格よりもかなり高価ですが、それでもコストパフォーマンスとしてはそう悪くないと感じさせるだけのポテンシャルを感じるので、決して王道ではないものの、それでも多様性を素直に評価できるような層に対しては非常に高い訴求力を発揮してくれそうな印象です。
かなり珍しいプティ・ヴェルドによる単一品種ワインですが、相対的にはグルナッシュ系のワインに近い雰囲気でもあるので、スペインや南仏、オーストラリアのワインが好きな人には比較的刺さりやすく、多くの人が想像する分かりやすい「濃厚で甘いワイン」でもあるので、繊細な料理と合わせるような場面でなければ、そう大きく外すようなことはないと思います。アルコールの高さに反して飲み疲れない不思議な性質も相まって、意外と多くの場面で楽しまれそうな印象でもあります。
ちなみに、「Harvest Challenge 2020」で「Best of Class」「Double Gold」を獲得(98点)、「2020 The Toast of Coast Wine Competition」で「Best Petit Vedot」「Double Gold」を獲得(95点)しているようです。
(2021/10)