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淡麗辛口の「杉並木」と、優しい甘みの無濾過原酒「姿」が有名な、栃木県の地酒蔵「飯沼銘醸」が手がけるスパークリング日本酒。純米吟醸生酒の「姿」をベースにした活性にごり酒タイプで、アルコール発酵中に瓶詰めすることで発泡タイプに仕立てています。通常の姿は、原料となる米の品種ごとに別キュヴェとして仕立てられていますが、このスパークリング姿は8種類の酒造好適米(雄町、彗星、五百万石、夢ささら、愛山、ひとごこち、山田錦、きたしずく)をブレンドして造られています(精米歩合は55%)。
想像以上に泡は控えめで、開栓時に吹き出す噴き出す心配も特になさそうな印象です。そして印象的なのがその芳醇さ。ボディの厚みや充実感、そして豊かな風味が非常に印象的です。特に、透明度の高い上澄み部分はその傾向が色濃く、逆に醪部分を攪拌させたにごり酒状態にすると、やや端的かつストレートな酒質へと変化するのが興味深いところでもあります(想像とは逆の指向性)。日本酒度が-2ということもあり、優しくまろやかな甘みが非常に飲みやすく、かなり口当たりの良いタイプなので、15.8%という高いアルコール感が特に気にならないのも大きな特徴となります。日本酒をそのまま泡を残してボトリングするという製法上、アルコール度数は一般的なスパークリング日本酒よりもやや高めにはなりますが、その分、本来の日本酒としての風味がより鮮明になる傾向にあるので、万人受けしやすい飲みやすさが加わっている分、より幅広い層に対して訴求しそうな印象です。
醪の量は多めですが、塊感のある粒立ちがあるので、ある程度攪拌してもドロっとした酒質にはならず、基本的にはサラッとしていて、優しい発泡感とともにスッキリと飲み進めることができます。素性の良さと独自の世界観、そして一般的な日本酒とは対極をなすかのようなモダンなボトルの見た目など、若い世代に対しての間口の広さが印象的でもあるので、固定観念にとらわれることなく素直に楽しんでもらいたいところです。
(2021/08)