- Very Good Quality -
矢の先端に音が出る「鏑(かぶら)」を付けたものを「嚆矢(こうし)」と呼び、物事を始める合図として利用されていますが、安心院葡萄酒工房では、初めて栽培する品種や仕込みで造る新たなワインに「安心院嚆矢」と名付け、そのチャレンジ精神を様々な味わいで表現しています。今回の一本は、白葡萄のシャルドネを、赤ワインの製造と同じように果皮浸漬(マセレーション)して造る、限定醸造ワインとなります。
ジャンルとしては、近年多種多様な広がりを見せる「オレンジワイン」と呼ばれるスタイルになりますが、見た目は煌びやかな黄金色で、イモリ谷のシャルドネと比較すると明らかに濃いものの、それでも一般的なオレンジワインとは異なり、比較的通常の白ワインに近い色調になっています。全体を通して、クリーンでキレのある美しい表情を持っているのは他の安心院ワインと同様ですが、コアには凛とした硬質感と、密度の高い葡萄のエネルギーがより鮮明に感じられます。琥珀や黄金糖のようなニュアンスは優しく感じられますが、一般的なオレンジワインよりも煌びやかで洗練された印象があり、安心院ワインらしい美点がより明確なので、マセレーションで造られたワインということを特に意識することなく、一般層に対しても素直に訴求しそうな印象を受けます(しっかりとした個性を持ちながらも素直に美味しく楽しめる)。
限定醸造ながらも、通常レンジのイモリ谷のシャルドネよりも価格が手ごろで、素直な美味しさと他にはない個性を同時に兼ね備えている点が非常に魅力的です。純粋なポテンシャルもかなり高く、なおかつ11%という飲みやすいアルコール感になっているのも好印象なので、機会があれば是非積極的に試してもらいたいところです。
(2021/04)