- Good Quality -
ビール会社大手のキリンの社内ベンチャーとしてスタートした、こだわりのクラフトビールブルワリーが「スプリングバレーブルワリー(SVB)」。多種多様なクラフトビールの飲み比べや料理とのペアリングなど、新たなビール体験を提案するプロジェクトでもあり、現在のところ「代官山」「横浜」「京都」に醸造所併設店舗を構えています。
この「オン・ザ・クラウド」は、SVBが手がける6種類の定番「コアシリーズ」のうちの一種類で、ニュージーランドのワイン産地として有名な「ネルソン」で生まれたホップでもある「ネルソンソーヴィン」をふんだんに使っています。また、大麦に加えて小麦を使っていることや、上面発酵で醸造するなど、大量生産系のビールとは一線を画する個性あるスタイルのビールとなっています(ブリュワーは「羽場清人」)。
同じネルソンソーヴィンを使ったビールとして、グランドキリンのホワイト・エールがあげられますが、ニューワールドのソーヴィニヨン・ブランを彷彿とさせる同様の特徴を持っているものの、オン・ザ・クラウドはより明確なビジョンや訴求力を兼ね備えている傾向にあります。ホワイト・エールは、ボディ自体は薄く軽快な反面、万人受けしやすいように風味や甘みをやや強めに打ち出したコントラストの高めなスタイル(あくまでも相対的に)となっていましたが、オン・ザ・クラウドはそう言った表層的な味付けは極力抑え、逆にボディそのものの充実さや内部の複雑さにより注視しているような傾向にあります(まさにワイン的な指向性)。
一般的なビールはクリアな黄金色のものが多いですが、オン・ザ・クラウドはノンフィルターのワインを彷彿とさせるような濁った見た目で、香りだけなら「まさにソーヴィニヨン・ブラン」と言った様相ですらあります。とはいえ、インパクトあるアタックで攻めるような端的なスタイルではなく、あくまでもワインと同じようにじっくり時間をかけて向き合うほどに、少しずつ爽やかでエレガントな表層の内側、そのボディに内包された複雑さが訴求してくるような世界観になっています(他との比較試飲だと霞やすいので単体で向き合うのがお勧め)。
(2020/12、2021/01、2021/02)