- Very Good Quality -
1993年に父から引き継いで当主となったフェルディナンドですが、最初の10年はロータリーファーメンターを使用した典型的なモダンバローロの造り手だったものの、2002年から路線を大きく変更し、大樽を使用した伝統的なスタイルへと原点回帰しています。
これぞセッラルンガ・ダルバとも言える、明確なタンニンを持つパワー系のバローロではありますが、突出したタンニンが全体を支配してはいるものの、その反面、思った以上にパッケージングが良好な傾向にあるのが印象的です。苦味や渋味が強く、構成要素は比較的シンプルな上に、ややフラットでボリューム感も控えめではありますが、それでも意外なほどの瑞々しさを兼ね備えており、コアにはしっかり熟した果実味が今もなお存在しています。果実系の要素は熟成感が出て古酒的な妖艶さも感じられますが、何よりボディの屈強さが際立っているので、純粋な寿命という観点から来るポテンシャルはかなり高く、伝統的なバローロらしい長寿命さが大いに期待できます。
抜栓日の印象だと、誰しもが容易に想像できる明快なセッラルンガ・ダルバ像が広がっていきますが、翌日に持ち越すと、逆に瑞々しさや果実の甘みにスポットが当たる傾向にあります。時間が経過してもなお、強い苦味を有するタンニンは健在ですが、それでも受ける印象は抜栓直後とは異なる傾向にあり、熟成したバローロ固有の訴求力が存分に伝わってきます。素直に味覚で楽しめるような万人受けするスタイルとは異なり、同時に純粋な点数評価としても傑出するような類のものではありませんが(ワイン・アドヴォケイトの評価はリリース直後のもので、現時点の印象としてはやや過大評価傾向にあり)、それでも数十年は軽く生きながらえるだけのポテンシャルは有しているので、価格帯を考えると十分評価に値すると思います。
(2020/11)