- Very Good Quality -
フォントディの創業者「ディノ・マネッティ」へのオマージュとして2008年から造られている、僅か年間生産量2,000本という特別キュヴェ。フォントディらしくサンジョヴェーゼ100%で造られるものの、通常のキャンティ・クラッシコなどとは異なり、オルチョと呼ばれるテラコッタ製のアンフォラを使用し、9ヶ月の自然発酵と6ヶ月の熟成が行われています。
驚かされるのが、一般的なサンジョヴェーゼ像とは異なる重厚さで、総じて力強く非常にタニックな傾向にあり、アルコールも高めな傾向にあります(15%)。果実の熟度と密度も非常に高く、その充実した内容からして、長期熟成に耐えられる高いポテンシャル要素が感じられます。その力強さから、一般的なアンフォラ系ワインとはやや異なる世界観のようにも感じられますが、時間とともに果実が纏う表情が垣間見れるようになり、抜栓翌日にもなると、酸化熟成系の表情や、長期熟成させた古酒にも似た、ある種の退廃的なニュアンスが表出するようになります(とはいえネガティブさはない)。さらに3日目にもなると、各要素の一体化が進み、滑らかな表層に加え、流麗で瑞々しいサンジョヴェーゼの魅力がより明確になる傾向にあります。最後まで力強く非常にタニックではありますが、ピュアな果実のエネルギーや、サンジョヴェーゼらしいタイトな美しさのおかげで、決して破綻することなくバランスしている印象でもあります。早くからでも飲める舵取りはされているものの、基本的には長期熟成が可能なスタイルだと言えそうです。
明確な個性を持ち、充実した要素を内包する存在感あるワインとして、かなり興味深いスタンスを示していますが、気軽に万人受けを狙ったような安直なワインではないので注意も必要です。あくまでも、フォントディという造り手や、サンジョヴェーゼという葡萄に対してより深く掘り下げたい人に対して、ピンポイントで訴求する一本だと言えるかもしれません。
(2019/09)