- Very Good Quality -
「テヌータ・ディ・トリノーロ」のオーナーとしてお馴染みの「アンドレア・フランケッティ」ですが、シチリアのエトナで造る、自身の名を冠したワインがこの「フランケッティ」。セパージュはヴィンテージ毎にブレンド比率が変化していますが、今回の2011年に関しては、チェザネーゼ・ダッフィーレ50%、プティ・ヴェルド50%となっています(生産本数は僅か3,000本)。
煮詰めたかのような濃密なプラムや梅の風味が広がり、アタックから強いインパクトを与えてくれます。泥土的で微細なタンニン、そして多彩なスパイスなど、充実した豊かな要素で構成されていますが、しっかりとした酸も感じられ、後味を引き締めるアルコール感など、全体像としては綺麗に纏まっている印象を受けます(鈍重さや野暮ったさなどは一切なし)。一般的なシチリアのイメージとは一味異なる、高い標高に位置するエトナならではのエレガントさと、充実した果実の力、そしてアンドレア・フランケッティらしい手腕が明確に反映されていると言えそうです。
内包する要素は非常に充実していますが、残念ながら手放しに喜べないのもまた事実で、モダンワインらしいやや高めの彩度や(低価格帯の口当たり重視のワインに近い性質)、ある種ニューワールドとイメージが重なるような前衛的な世界観など、純粋なワインとしての完成度はそこまで高いわけではなく、やや実験的な指向性が強いような印象を受けます。葡萄そのものが充実しているのでポテンシャルはありますが、それでも無理して熟成させるよりも、若いうちに早飲みした方がその魅力をストレートに享受できそうな印象でもあるので、基本的にはこの価格帯のワインに対して無理なく対価を払える富裕層向けといったところかもしれません。
(2019/05)