- Good Quality -
ワインショップを経営していたマリーとフレデリックの夫妻は、ヴァン・ナチュールのワインを扱う事が増えつつある中で求めるワインに目覚め、理想のワインを追い求めた結果、アルボラという小さな集落で自らワイン造りを行うに至ります。
上位キュヴェとなるイセ・オのセパージュは、シラー60%、グルナッシュ35%、サンソー5%。かなり個性的なスタイルで、多様性のある要素がこれでもかと詰め込まれているのが非常に印象的です。熟して充実感のあるアメリカンチェリーや、漢方系のハーブ風味など、振幅感のある明確な意思表示は行っていますが、テクスチャは滑らかで全体としては不思議と纏まっています。良好な口当たりで果実味が生きているものの、同時に非常に酸が豊富で、ある時点から果実のボリューム感を超える水準で主張する傾向にあります。また、14%とアルコールも高いので、抜栓直後の親近感とは裏腹に、時間をかけるほどに飲み手との距離が離れていく印象でもあります。
際立つ個性が独特の世界観を生み出していますが、概ね良好な抜栓日の印象とは異なり、翌日に持ち越すことでかなり大きな変化が訪れます。果実味はなだらかに落ち着き、その反面、酸の主張はより強まっていきますが、何より全体的なバランスの変化が劇的で、その変化の過程で徐々に退廃的な要素が表出し始めるのが気になります。自然派らしいヴァン・ナチュールならではの変化という捉え方もできますが、その退廃感はもはや20〜30年経過したような古酒的世界観なので、良くも悪くも突出した個性がより際立ちます。明確に主張する酸と退廃感から、どことなくイタリアの土着系ワインとスペインの伝統産地の古酒をブレンドしたかのような印象を受けますが、いずれにせよ、あまり一般向けの世界観ではないのは確かです。相対的に抜栓直後の方が良好な傾向にあるので、どちらかと言えば、あまり時間をかけずに飲み切ってしまう方が無難な印象でもあります。
(2018/09)