- Very Good Quality -
ダニエル・バローを象徴する1本と言えるのががこの「アン・ビュラン」。過去数度の試飲時は、いずれのヴィンテージも収穫後2〜3年という早い時期での試飲となりましたが、今回は6年としっかり時間を置いています。
抜栓直後から非常に印象的なのが、明確なミネラルを感じる明確な輪郭と硬質感を持つその表情。やや苦味がちで、鉱石を舐めているかのような印象を受けることに加え、全体的に細身でやや小降りに纏まっている傾向にあるので、あまり一般受けするようなわかりやすいスタイルではないとも言えます。それでも、古木らしいエネルギー感が伝わるような、コアの緻密さと凝縮感は奥底からジワリと滲み出てくるので、本質的な良質さは相応に理解できると思います。
そつなく良質な表情は構築されているものの、ヴィンテージの影響もあるのか、本来のアン・ビュランらしさがあまり結実しているような傾向になく、抜栓日の印象はそれほどポジティブではありませんでした。しかし、翌日に持ち越すことで表情が一変。驚くことに、当初は確認できなかったコアそのものの充実感が一気に昇華し、蜜を感じる果実の濃密さ、もはや貴腐ワインに近い果実の凝縮感が滲み出し、抜栓日に突出していた苦味要素が気にならなくなります。同時にナッツ、レモン、仄かなバターなどの風味も綺麗に展開し、しっかりとした酸も含め、アン・ビュランの持つ魅力が十二分に伝わってきます(それでもまだまだポテンシャルの全ては引き出しきっていない印象)。
危うく過小評価してしまうところでしたが、それでも本質的には「やや難解」な傾向にあり、また、過去のアン・ビュラン像と比較すると相対的に大人しめなのは確かなので、2011年はあくまでもアン・ビュランを飲み慣れた層向けだと言えそうです。もしダニエル・バローを初めて飲むという人であれば、より明快でリッチなスタイルのアン・フランスや、アン・ビュランであっても2014年や2015年といったヴィンテージの方を選ぶ方が無難かもしれません。
(2017/12)