- Good Quality -
セカンド・ラベル的なポジションに位置しているのが、石灰岩土壌の名を冠するキュヴェ「カルクゲシュタイン」。ベッカー発祥の畑となる「カマーベルク」に、新たに自ら開墾した「ザンクト・パウル」と、偉大な2つのグラン・クリュのブレンドで造られていますが、この2009年を最後に、翌2010年からは装いも新たに「シュヴァイゲナー」として生まれ変わっています。
シュヴァイゲナーよりも色調はやや淡めでピノらしい雰囲気があり、適度な熟成を経ていることもあってかエッジがややオレンジがかっています。果実味そのものは程よい熟成感によって解れている傾向にありますが、ベッカーらしい果実の甘みと旨みが心地よい求心力を生み出しているので、その魅力にそれ程大きな翳りは見られません(抜栓翌日に持ち越すとやや酸が勝ち気味になりますが)。紅茶、仄かなコーヒー、ピリッとする苦味、それらが冷淡で硬めの土台の上に広がりますが、全体像としては思いの外小降りに纏まっている傾向にあり、やや軽快な立ち振る舞いも含めて、いたって落ち着いた優しいスタイルに仕上がっています。それでも、コアには明確な力が感じられるので、ある意味、山椒は小粒でもぴりりと辛い、といった世界観だとも言えそうです。
熟成感のある、状態の良いバックヴィンテージが現存すると言うことに対しては一定の価値が見いだせるものの、そうは言っても、その対価としてはあまりにも価格が高すぎるので、さすがに純粋なコストパフォーマンスとしては分が悪い印象があります。現状ではまだ完全な古酒の領域に到達していないので、その価値判断については難しい印象もありますが、一般目線で判断すると、今は無きカルクゲシュタインに対して特別な思い入れがない限りは、無理して選択する必要はないのかもしれません。
(2017/03)