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山口県周南市にある小さな酒蔵ですが、創業は文政二年(1819年)と歴史は古く、県内では9番目に古い酒蔵となります。山口県産の米を使用し、手がけるのは純米酒のみ、年間を通じて生産する四季醸造であることなど、同じ山口県で有名な「獺祭(国産の山田錦、純米大吟醸、四季醸造)」とも共通する点があります。
2016年5月に発売された新商品で、全ての原田の頂点に立つとも言えるのがこの「原田35」。山口県産山田錦と米麹を使用。精米歩合35%、日本酒度-3、酸度1.5となります。一般的な清酒は、加水調整(割り水)を行うことでアルコール度数を16%程度に抑えていますが、原田35は加水しない「原酒」となります(実際には、アルコール度数1%未満の調整は認められています)。原酒の場合、通常はアルコール度数が20%程度になりますが、近年は酵母の開発が進んでいることもあって、原酒であっても16度程度に抑えられている商品も増えています(原田35も実際のアルコール度数は16%)。
通常の純米大吟醸と同様にアタックにおける吟醸香はやや控えめですが、口に含むと塊感のある結晶化されたかのような明確な甘みが伝わり、多重に積層された密度の高い体躯、そして原田らしい全体を引き締める程よいシャープさが全体をうまく導き纏めている傾向にあります。日本酒度が-3と言うこともあり、通常の純米大吟醸よりも口当たりの良い優しい甘みが心地よく、余韻も長く楽しめるのが特徴で、原酒らしい濃密さと味わい深さが見事に結実していると言えます(淡麗辛口系とは対極の位置にあり)。
一升瓶で200本、720mlボトルで600本の限定生産と言うこともあり、流通量は限られていますが、純米大吟醸の原酒が持つ世界観を存分に堪能でき、さらにはワインが持つ性質との類似性も認めることもできるので、もし市場で見かけることがあればぜひ試してもらいたいところです。
(2017/02)