- Good Quality -
Kヴィントナーズの赤ワインは基本的にシラーがメインになりますが、一部例外もあり、グルナッシュ、カベルネ・ソーヴィニヨン、サンジョヴェーゼ、マルベック、テンプラニーリョなど、他の品種を使用したワインも極少量ですが造られています。
チャールズ・スミスが初めてシラー以外の品種で造ったワインがこの「ザ・ボーイ」。ワイン名になっている「ザ・ボーイ」とは、際立つ個性で物議を醸したフランスの伝説的音楽家「セルジュ・ゲンスブール」の楽曲「I'm The Boy」が由来となっていて、裏ラベルには歌詞の一節となる「i'm the boy who can enjoy invisibility」の一文が刻まれています。
ヴィンテージによって品種構成や畑は微妙に異なりますが、2012年のザ・ボーイはグルナッシュ100%で、ワラ・ワラ・ヴァレーの「リヴァー・ロック・ヴィンヤード」が66%、ワルーク・スロープの「ノースリッジ・ヴィンヤード」が34%となっています(複数のAVAがブレンドされているのでワシントンの州名ワインとしてリリースされている)。
色調はしっかりとしているものの、透明感のあるクリアな赤系で、まさにその品種名の通り宝石のガーネットを彷彿とさせます。高い熟度と瑞々しさが両立し、赤系果実寄りのキュートな表情と輪郭のはっきりとした甘みが印象的で、気軽に飲める親近感あるスタイルに、アーバン・ワインらしい端正さが加味されている傾向にあります。甘さがやや糖質的ですが、それでもその甘さに偏重することはなく、しっかりとしたアルコール感に、内部にある香草風味の複雑さ、それらが一体となることで、安易な方向に振り切れないよううまく舵取りがなされています。より気軽に多くの層に受け入れられそうなスタンスが非常に好印象で、味覚で感じる享楽感としてはKヴィントナーズの中でもトップクラスだと言えそうです。
(2017/02)