- Good Quality -
ACブルゴーニュの古酒となりますが、30年近い時間を経たとは思えない程しっかりとした佇まいと意思を兼ね備えていることに素直に驚きます。経緯は不明ですが、ピノ・ノワールの古酒とは思えない程濃い色調で、澱が全くないことや、液面が低くないことなどからして、どこかの段階でリコンディションされたボトルだと思われます。ただし、コルクやエチケットにはある程度の年数経過の痕跡が見られるので、リコルク後もある程度の期間、熟成を経たような印象があります。
やや吹いた跡が見られたので少し不安もありましたが、実際の中身に関しては特に問題ありませんでした。コアには枯れた要素が僅かに見られ、体躯エッジのなで肩なところや、表層ののっぺりした点など、長い年月による熟成によって訪れた古酒特有の風情も多少は醸しだしているものの、時間とともに増す密度や構成力、そして奥底から湧き上がる仄かな果実味、さらには苦味や燻しを感じるタンニンが未だに主要素になっている点など、受ける印象としては2000年代前半のヴィンテージといったところでもあります(明らかに抜栓翌日の方がピーク)。
純粋にワインとして素直に楽しめる(美味しく飲めてしまう)だけに、この価格帯で楽しめる古酒としては、リスクがほとんどないと言っていい分、圧倒的なコストパフォーマンスを誇りますが、詳細な素性が不明というマイナス面もあるので、逆に言うと「1989年というヴィンテージを楽しみたい」といった場合にはあまり向いていないとも言えます。
(2016/10)