- Very Good Quality -
佐藤嘉晃、恭子夫妻による小さなプロジェクトとして、2009年に始まったのが「サトウ・ワインズ」。もともとは銀行員だったという異色の経歴の持ち主ですが、転勤先のロンドンでワインに目覚め、ワインを造りたいという思いにかられ、最終的にニュージーランドにたどり着きます。セントラル・オタゴを代表する偉大な生産者「フェルトン・ロード」でキャリアを重ねたこともあり(恭子さんは現在もフェルトン・ロードの栽培に関与)、サトウ・ワインズも同じセントラル・オタゴを拠点としています。
クロムウェルから北に7kmの位置にある「ノースバーン・ステーション・ヴィンヤード」から造られます。生産本数は僅か880本。栽培は2009年からビオディナミに転換。収穫は手摘みで、収穫量は僅か29hl/ha。全房圧搾後、天然酵母で発酵され、オーク樽で14ヶ月熟成されます。
色調は鮮やかかつクリアで、一般的なグリ系の色調とはやや異なります。想像以上の凝縮感と密度に驚かされ、ピノ・グリに対する概念を吹き飛ばすかのような超絶的ポテンシャルに圧倒されます。スタンダードな造りのピノ・グリでありながらも、既にスキンコンタクト系のピノ・グリに比肩する水準の複雑さと緻密さを兼ね備え、白ワインでありながらも非常にタニック(?)で、口中にドライな収斂感が広がります。多様性ある要素がギッシリと詰め込まれているものの、暴れることはなくしっかりと纏まり、その個性と洗練性がうまくバランスしひとつの世界観を共有している印象があります。
いたってドライな仕上がりですが、ハチミツを彷彿とさせる濃厚な果実味が非常に印象的で、「超辛口の貴腐」といった様相すらあり、どこかシュナン・ブランのような雰囲気も感じられます。この際立った個性は非常に興味深く、どことなく「泡のないジャック・セロス」的な世界観や、超絶ミネラル道の「カンテ」、孤高の南仏「クロ・デ・フェ」など、様々な生産者の偉大なワインのみが持つ、固有の資質に近いものを感じます。
(2016/05)